中小企業経営強化税制って何?

転ばぬ先のメモ魔税理士転ばぬ先のメモ魔税理士

中小企業経営強化税制とは、平成29年度税制改正により創設された減税措置です。

完全な「創設」かというと、実はそうでもなく、従来あった「生産性向上設備投資促進税制」の改良版みたいな感じです。

中小企業経営強化税制はどんな減税措置かというと、一定の設備投資をした場合、

①即時償却
②取得価額の10%(又は7%)の税額控除

のいずれかを選択できる、という内容になっています

中小企業経営強化税制はどんな会社でも適用を受けることができるの?

中小企業経営強化税制」という名前の通り、「中小企業」でないと適用を受けることができません。

正確に言うと、その会社が「中小企業者等」に該当することが要件です。

「中小企業者等」ってどんな会社?

中小企業経営強化税制の対象となる「中小企業者等」とは、①資本金の金額が少なく、かつ、②大きな会社と資本関係がない会社のことです。

①については、資本金若しくは出資金の額が1億円以下であることが要件です。

また、②については、資本金若しくは出資金の額が1億円超の法人(「大規模法人」と言います)から2分の1以上の出資を受けておらず、かつ、2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受けていない、ということが要件となっています。

中小企業経営強化税制はいつまで適用ができるの?

平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に使用開始した資産について、中小企業経営強化税制の適用を受けることができます。

どんな資産でも中小企業経営強化税制の適用を受けることができるの?

中小企業経営強化税制の適用対象となる資産には、金額基準等があります。

転ばぬ先のメモ魔税理士転ばぬ先のメモ魔税理士

中小企業経営強化税制は、減税の種類について、「即時償却」か「税額控除」の2パターンの選択適用という側面と、適用を受ける資産について、「生産性向上設備(A類型)」か「収益力強化設備(B類型)」の2パターンが用意されている、という側面があります。

「生産性向上設備(A類型)」は、「生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備」であることが要件です。

「収益力強化設備(B類型)」は、「投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備」であることが要件です。

どちらの要件も満たすことができる場合があることを考えると、どちらの資産として中小企業経営強化税制の適用を受けるか「選択適用」できる、という言い方もできますが、
①「生産性向上設備(A類型)」と「収益力強化設備(B類型)」では、対象となる資産に違いがあること
②実際の手続きは「生産性向上設備(A類型)」の方が簡単
なことから、実務的には、
「生産性向上設備(A類型)」の適用を受けることができる資産であれば、「生産性向上設備(A類型)」を適用し、「生産性向上設備(A類型)」の適用を受けることができない資産であれば、「収益力強化設備(B類型)」の適用を検討する
、という判断になります。

「生産性向上設備(A類型)」の対象資産

次のような資産が対象となります。

設備の種類用途又は細目最低価額(1台1基又は一の取得価額)販売開始時期
機械装置限定なし160万円以上10年以内
工具測定工具及び検査工具30万円以上5年以内
器具備品限定なし30万円以上6年以内
建物附属設備限定なし60万円以上14年以内
ソフトウェア設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの70万円以上5年以内
※ソフトウェアについては、複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除かれます。

「生産性向上設備(A類型)」の要件の「生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備」というのは、正確に言うと、「経営力の向上に資するものの指標(生産効率、エネルギー効率、精度など)が旧モデルと比較して年平均1%以上向上している設備」ということです。

この、「生産性1%以上向上」と、上の表の「販売開始時期(一定期間内に販売されたモデルであること)」については、工業会等から証明書を取得して確認します。

そして、税務署に申告する際には、その証明書を申告書に添付して提出します。

証明書があれば「生産性向上設備(A類型)」に該当する訳ではないので注意!

工業会等の証明書は、あくまでも「生産性1%以上向上」と「一定期間内販売開始」のみを証明するものです。

簡単に言うと、上の表にあるところの「最低価額」要件を満たしていなくても証明書は発行されてしまう、ということです。

転ばぬ先のメモ魔税理士転ばぬ先のメモ魔税理士

「最低価額」要件を満たしているかどうかは、申告の際に、購入したこちらサイドできちんと確認する必要があるのです。

また、「設備の種類」「用途又は細目」についても証明していない点に注意です。

転ばぬ先のメモ魔税理士転ばぬ先のメモ魔税理士

具体的に言うと、こんな事例が発生するかは分かりませんが、工業会等が、その資産を「機械装置」だと言っても、税法上それが「車両運搬具」に該当するのであれば、「生産性向上設備(A類型)」の適用を受けることはできない、ということです。

発表されている「工業会証明書様式」を見ると、「当該設備の概要」として、「減価償却資産の種類」「設備の種類又は細目」なんていう欄があります。

例えば、建設業を営む会社が「クレーン付トラック」を購入した際、「生産性向上設備(A類型)」の適用を受けられるようにメーカーが気を利かせて「減価償却資産の種類」に「機械装置」と記載して工業会から証明書を取得することができたとしても、税法上、「クレーン付トラック」は使用形態として「貨物の輸送の用」に供されるものですから「車両運搬具」に該当するのです。

「設備の種類」「用途又は細目」についても、証明書をうのみにせず、税法に照らし合わせて中小企業経営強化税制の要件を満たすかどうかを確認する必要があるのです。

同じ資産でも営む事業でアウトの場合有!

また、税法に照らし合わせて上の表の「設備の種類」に該当したとしても、中小企業経営強化税制を適用できない場合があります。

まず、器具備品ですが、「電子計算機」については、情報通信業のうち自己の電子計算機の情報処理機能の全部又は一部の提供を行う事業を行う法人が取得した場合には、中小企業経営強化税制は適用できません

また、「医療機器」については、医療保健業を行う法人が取得した場合には、中小企業経営強化税制は適用できません

次に、建物附属設備ですが、こちらについては、医療保健業を行う法人が取得した場合には、すべての細目の資産について、中小企業経営強化税制は適用できません

中小企業経営強化税制は、その資産を何の事業に使うかの要件も有!

中小企業経営強化税制の適用は、次の事業の用に使用した場合に限定されています。

農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、建設業、製造業、ガス業、情報通信業、一般旅客自動車運送業、道路貨物運送業、海洋運輸業、沿海運輸業、内航船舶貸渡業、倉庫業、港湾運送業、こん包業、郵便業、卸売業、小売業、損害保険代理業、不動産業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合(他に分類されないもの)、サービス業(他に分類されないもの)

電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、娯楽業(映画業を除く)等や、性風俗関連特殊営業は対象になりませんので、ご注意を。

転ばぬ先のメモ魔税理士転ばぬ先のメモ魔税理士

続いて、そもそも「即時償却」「税額控除」とは何か?についてお話します。

『即時償却って何?』の話をする前に「減価償却」の話をします

通常、固定資産を購入した場合、買った金額が全額経費になる訳ではありません。

何年にもわたり使っていくものですから、その使う期間の中で均等に経費にしていく感じです。

この、固定資産を経費にしていくことを、「減価償却」と言います。

そして、経費化された金額「減価償却費」といいます。

転ばぬ先のメモ魔税理士転ばぬ先のメモ魔税理士

会社の決算書(損益計算書)に、「減価償却費200万円」と記載されていれば、資産の購入金額のうち、その年の経費になった金額が200万円ある、ということになります。

イメージしやすい「定額法」

500万円の機械を5年間使うのであれば、毎年100万円経費にしていく感じになります。

転ばぬ先のメモ魔税理士転ばぬ先のメモ魔税理士

「毎年同じように使うんだから、売上への貢献度も毎年同じだろう、だったら経費も毎年同じだな」という考え方ですね。

この考え方に基づいて毎年の減価償却費を計算する方法を「定額法」と言います。

ちなみに、この「5年」を「耐用年数」と言います。

耐用年数5年の資産なら、5年持つ(使える)ということですね。

でも、何年持つかは、使い方によっても違いますし、実際に何年使うか、使えるかなんて将来のことは今の時点では分かりません。

そこで実務上は、資産の種類や材質などに応じて税務署があらかじめ決めた耐用年数で減価償却費を計算します。

理屈に合っている「定率法」

転ばぬ先のメモ魔税理士転ばぬ先のメモ魔税理士

もう1つの考え方として、「資産が新しい時は、すごく生産性もいい(つまりは売上への貢献度も高い)けれども、だんだん古くなると、調子が悪くなってきて、生産性が下がる」という側面に着目することもできます。

そこで、「使用開始した時には多めに減価償却費を計上し、徐々に各期の減価償却費を減らしていく」という計算が生まれます。

この考え方に基づいて毎年の減価償却費を計算する方法を「定率法」と言います。

減価償却の常識をぶっ壊したものが即時償却!

今までお話したように、固定資産を購入した場合には、使う期間で何年かにわたり経費にしていく、というのが、ある意味「常識」なんですが、即時償却は、この常識をぶち壊します。

購入金額全額を使用開始した期の経費にしてしまうんです。

即時償却って得なの?

金額の大きい資産を購入し、それがいっぺんに経費になる訳ですから、その期の利益を大幅に減らすことができます。

利益が減れば、税金も減る、という訳です。

転ばぬ先のメモ魔税理士転ばぬ先のメモ魔税理士

その時点では「スゴく得した気分」になるかもしれませんが、即時償却は、言ってみれば、「経費(減価償却費)の先取り」なんですよね。

5年間で経費にするところを、1年で経費にする訳ですから、2年目以降はその分、経費が少なくなります。

例えば、材料費などを完全に無視して、5年間使える500万円の「機械A」を購入し、その機械のおかげで毎年400万円の売上が5年間計上できるようになる、と仮定します。

通常の減価償却を行い、定額法で計算すると、毎年の利益は、

売上400万円
減価償却費100万円(=500万円÷5年)
利益(差引)300万円

ということになります。

ところが、即時償却を選択すると、

(1年目)
売上400万円
減価償却費500万円
利益(差引)△100万円

(2~5年目)
売上400万円
減価償却費0万円
利益(差引)400万円

となります。

利益が出なくて税金を払わなくていいのは1期目だけで、2期目以降は通常の減価償却をしたときに比べて利益が大幅に増えることになります。

税額控除って何?

即時償却は、経費を多額に計上することにより利益が減り、それに伴い税金も減る、という節税効果(その期だけですけど)があるんですが、税額控除は、その名の通り、(計算された)「税額」を「控除」(減らす)というもので、即時償却とは全くことなる節税方法になります。

転ばぬ先のメモ魔税理士転ばぬ先のメモ魔税理士

中小企業経営強化税制の税額控除は、「取得価額の10%」となっています。

これはどういうことなのか、先ほどのお話に出てきた耐用年数5年・取得価額500万円の機械Aを購入した場合でお話します。

500万円の機械を購入し使用開始した場合、その期の減価償却費は定額法なら100万円ですよね。

先ほどのお話のように、売上が400万円計上されるので、利益は

売上400万円△減価償却費100万円=利益300万円

です。

法人税の税率が20%と仮定すると、納めるべき法人税は

利益300万円×法人税率20%=法人税60万円

となります。

税額控除が登場するのはここからです。

この60万円の法人税を減らすことができるんです。

先ほどお話したように、中小企業経営強化税制の税額控除は、「取得価額の10%」です。

500万円の機械であれば、

500万円×10%=50万円

の税額控除です。

つまり、利益300万円を基に計算した法人税額60万円から50万円を控除し、法人税が

60万円△50万円=10万円

になるよ、ということです。

税額控除は得!

先ほどお話したように、即時償却は「経費(減価償却費)の前取り」なので、2期目以降の法人税が跳ね上がります。

でも、税額控除は「経費の前取り」ではありません。

転ばぬ先のメモ魔税理士転ばぬ先のメモ魔税理士

100万円の減価償却費は2年目以降も計上することができます。

その上で、1期目の法人税を下げることができるんです。

税額控除の節税効果を即時償却に置き換えてみる!

この節税効果を、別の観点から考えてみます。

今回のケースですと、50万円の法人税が安くなる訳ですが、減価償却で50万円税金を安くするには、いくらの経費(減価償却費)があればいいのでしょうか?

法人税率を20%と仮定すると、

50万円÷20%=250万円

と計算できます。

先ほどのお話のように、利益が300万円の場合、法人税は

利益300万円×法人税率20%=法人税60万円

です。

250万円の減価償却費を計上できれば、その分利益が減り、

利益300万円△減価償却費250万円=利益50万円

利益50万円×20%=法人税10万円

となり、税額控除と同じように、法人税が50万円安くなります。

転ばぬ先のメモ魔税理士転ばぬ先のメモ魔税理士

つまり、50万円の税額控除の適用を受けるということは、250万円の資産を購入し、即時償却したのと同じ効果がある、ということになります。

お金を出したのは500万円なのに、5年間で750万円の減価償却費を計上できるのと同じ、ということです。