役員が退職するので役員退職金を多額に支払って経費にし、税金を減らしたい。
でも、支給する現金がない。
分割払いでも大丈夫だろうか?とお悩みのあなたへ。
会社のニーズとしては、払わなくても(払えなくても)退職した時に、一時にドカンと経費にしたいってことですよね?
それができるかどうかを、どのように考えていけばよいのか、お話します。
インデックス
栃木県足利市で相続税専門税理士をお探しの方へ!「まず、役員の退職金が経費になるタイミングについての規定を押さえよう!」
それは、法人税基本通達に次のように書かれています。
9-2-28 役員に対する退職給与の損金算入の時期
退職した役員に対する退職給与の額の損金算入の時期は、①株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度とする。ただし、法人がその②退職給与の額を支払った日の属する事業年度においてその支払った額につき損金経理をした場合には、これを認める。
①でも②でも良い訳ですが、一時にドカンと経費にするということは、①を選択するということですよね。
栃木県足利市で相続税専門税理士をお探しの方へ!「分割払いの期間が長期化すると、未払に計上したけど、本当に払うの?と思われてしまう!」
法人税には、「債務確定主義」というものがあります。これもまた、法人税基本通達に次のように書かれています。
2-2-12 債務の確定の判定
法第22条第3項第2号《損金の額に算入される販売費等》の償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。
(1)当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
(2)当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3)当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。
株主総会の決議等を経ているのであれば、「払うと決めた」訳ですから、(1)の債務の成立要件は満たしていると言えます。
その役員が、実際にきちんと辞めている(形式的にだけではなく、実態的にも退職している)のであれば、(2)の原因事実の発生要件は満たしていると言えます。
(3)についてはどうでしょうか?
極端な話、例えば100年の分割払いにしたとすると、決議した金額を本当に支払うの(支払えるの)?という問題が出てきます。
1年で10万円、100年で計1,000万円支払うこととした場合、そんな超未来にきちんと支払えるかどうかなんて今の時点では分かりません(会社がもうないかもしれません!)。
経費にしようとする1,000万円という金額の算定が合理的と言えるでしょうか?
栃木県足利市で相続税専門税理士をお探しの方へ!「『役員退職金』として認められないと、『退職年金』扱いになってしまう!」
「退職年金」というものがあります。
退職後の生活保障のために、会社から年金形式でお金を受取るのです。
退職年金を会社が支払う場合には、支払った都度、経費になります。
「退職時にドカンと経費」は認められていません。
上記(3)に該当しない→債務確定主義を満たさない→上記①を選択できない
となると、「会社は役員退職金を払ったつもりかもしれないが、実態は『退職年金』である」とみなされ、「退職時にドカンと経費」にすることができなくなってしまいます。
栃木県足利市で相続税専門税理士をお探しの方へ!「ポイントはどこか?」
何年の分割払いだったら一時の経費にしていい、という明確な規定はありません。
分割払いにすることについて、合理的な理由があり(その理由がきちんと内容のあるものだとしても、実態がそれに合っていなければダメです)、課税上弊害がない(本当に払うか分からない退職金を、退職時の経費にするのは弊害がありますよね!)と認められる場合に限り、退職時の一時の経費として認められます。