法人税法上の貸倒損失は3パターン
売掛金や貸付金などが回収できない場合、それらの債権金額(または、債権金額から貸倒れ管理のための「備忘価額」を控除した金額)を「貸倒損失」という費用に振り替えて、経費にすることになります。
それが認めらるのは、「法律上の貸倒れ」「事実上の貸倒れ」「形式上の貸倒れ」があった時のみです。
回収できないことを説明できるか
いろいろなパターンがありますが、「回収できない」という事実がまず必要です。
そのためには、当然ですが、一生懸命「回収する努力」をしなければなりません。
それでもどうしてもできない、ということが回収できない、ということです。
次に、その回収のための努力の過程を記録に残しましょう。
それを客観的に見て、回収する努力をきちんとしたか、自問自答してください。
「何となく取れそうにないから、貸倒れにしてしまえ」というのは、認められませんし、大変危険です。
入金があると大変なことになる
貸倒れ処理した後、その債権に係る取引先から入金があった場合、どうなると思いますか?
「入金があったんだから、あきらめていたお金が入ってきたんだから、うれしいはず」と思うかもしれませんが、そんな単純な話ではありません。
まず、「貸倒損失」の計上自体に問題があったのでは?ということになります。
貸倒損失の経費計上自体が、過去の事業年度にさかのぼって、認められなくなる(その分、経費が少なくなり、利益が増えるので、修正申告が必要になる)可能性があります。
また、その債務者から入金があった、ということを隠す誘惑にかられる場合があります。
会社への振込入金の事実自体は消せないので、とはいえ、収入として計上するのが嫌なので、その入金を、社長が会社から借りているお金の返済として処理してしまおう、と考え出すのです。
もちろん、そんな処理は認められませんが、最初にきちんと債務者の状況等を確認していれば、こんなことにはならないのです。
まず大事なのは、回収努力に手を抜かないことなのです。
放っておくと危険
「貸倒損失を計上するのは大変そうだな。じゃあ債権をそのままにしておこう。」というスタンスだと、それはそれでまた別の問題を引き起こす可能性があります。
経費(貸倒損失)に計上していいのは、「回収できないことが明らか」になった事業年度とされています。
それなのに、今回の決算が黒字だからといって、その既に実態としては貸倒れになっている債権を貸倒れに振り替えよう、という誘惑にかられてしまうのです。
そのようなことがないように、早過ぎ(まだ貸倒れになっていない)でもなく、遅過ぎ(とっくに貸倒れになっている)でもない、ベストなタイミングで、貸倒損失を計上してください。